今シーズン最後のボート大会。

コックス(ボートの船長)の平野が漕艇場に着くなり、 「今日、トロフィーを持って帰らないとさ、俺、買って帰らなければならないからさ。みんな頑張ってよ」と一言。
実は前回の表彰式のとき、彼の娘(幼稚園児)がトロフィーが欲しいって泣いたのだ。
僕らは4位。トロフィーがもらえなかったんだよね。
彼の愛娘のためにも、試合に勝ってトロフィーを持って帰らなくては…。

…が、メンバーの一人が朝まで飲んでいて二日酔い状態。
今日は禁酒でレースに挑むはずだったのだが、大丈夫か?僕ら。

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天候が悪く、風が強い。
漕ぎ手としては、ちょっとやな気分。

まずは予選。
ボートに乗り込むとき、あまりにも風が強く波が立っているため、桟橋のボートが暴れている。 桟橋もボートの中も、水浸し。 船酔いしそうなくらい。
スタート地点へ向かうが、向かい風でボートが進まない。
オールが風であおられて、舞い上がってしまう。    

予選、スタート。
無難な漕ぎで3位。予選通過。 順調な滑り出し。

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次のレースに備えて、食べ物をとる。
身体を休め、睡眠をとる。

そのうち、雨が降ってきた。風もさらに強くなってきた。
タープの高さを下げ、雨と風をしのぐ。
気温も低くなってきた。 身体にこたえる。 服を着込んで、寒さに耐える。
タープの縫い目から雨漏りしてきたので、僕らは縫い目に沿って一列で寝転ぶ。
男5人が低い屋根の下で一列に重なり合うように寝転ぶ姿は、かなり滑稽。

雨と風と寒さに耐えられず、僕らのモチベーションも下がる一方。
「俺たち、何してるんだろう?」
「どうする?決勝?」
「棄権して、帰っちゃおうか?」
「車の中で寝ようよ」
「あー、温泉入りたい」

モチベーションが下がりに下がって車の中で寝ようとしたとき、男子決勝の集合がかかった。

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いよいよ決勝。
相変わらず桟橋のボートが暴れてる。
…が、運良く雨はやんだ。

決勝に並ぶ他のクルーは、いつもながら体格がいい。
「WASEDA」なんて書かれているユニフォームを着ている人もいる。
(早稲田大学は、漕艇の名門中の名門。隅田川での早慶レガッタも伝統のあるレース)

「えっ、あんな人たちと戦うの?」
強そー。

決勝、スタート。
僕らは1位で飛び出した。 いいスタートだ。
その後、他の艇に徐々に追い上げられレース中盤では2位。
最後の力を振り絞ってラストスパートで追い上げ、なだれ込むようにゴール。

「ゴールまであと1本でも多く漕がなければならなかったら、漕ぎきれなかったよ」
…と、ゴール直後に漕手全員がコメントしたくらい、力を出し切ったレースだった。

「2位かな?」
「2位だろ。」
「奇跡で1位だと嬉しいな」
「ほんのちょっとでいいから、先にゴールしてるといいなぁ」

桟橋にボートを着け、レースを見ていた友達に尋ねる。
「2位?」
「たぶん、2位」
「そっか、残念…」

陸にあがり、レース結果が表示されるところへ走る。
「今のレース、1位はどこですか?」
「巴流(ぱる)だよ」と、スタッフが答える。
「やった。1位だ!ウォーッ!」

念願の1位。 めっちゃ嬉しいー。
2位との差は、0.16秒。
ボートで500m漕いで、その差0.16秒。
すごい接戦だったことがわかる。
やっぱり1位は嬉しい。
実は、僕らにとっては14年ぶりの1位。   

これで、コックスの娘も満足?
…と思ったら、優勝トロフィーは持って帰れないとのこと。
結局、彼はトロフィーを買って帰ったのだろうか?

(文章:平井)


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